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日々あれこれ


by yangzi-o

『くまちゃん』(角田光代)

 「何かをやりたいと願い、そろが実現するときというのは、不思議なくらい他人が気にならない。意識のなかから他人という概念がそっくりのまま抜け落ちて、あとはもう、自分しかいない。自分が何をやりたいかしかない。だれが馬鹿だとか、だれが実力不足だとか、だれがコネでのしあがったとか、だれが理解しないとか、だれが自分より上でだれが下かとか、本当にいっさい、頭のなかから消え失せる。それはなんだか、隅々まで陽にさらされた広大な野っぱらにいるような、すがすがしくも心細い、小便を漏らしてしまいそうな心持りなのだ。自分を認めないだれかをこき下ろしているあいだはその野っぱらに決していくことはできないし、野っぱらを見ることがなければほしいものはいつまでたっても手に入らない」

 『くまちゃん』は今週中に図書館に返却しないといけないので、きょうは残り半分を大急ぎで読みました。会場で注文をいただいた豆本は本日お約束どおりの「納期」で発送できたし、久しぶりに読書に堪能できました。恋愛小説は性に合わないけど、角田さんの小説は好きです。『対岸の彼女』『八日目の蝉』は良かった。『くまちゃん』も仕事がらみの恋愛を題材にしていて、小説の世界にひきこまれました。
by yangzi-o | 2009-05-07 22:54 | 心に残った言葉